今年は新型コロナウイルス下の状況を踏まえ、横浜若葉町WHARFをライブ会場としながら、オンラインを活用し、全国からも参加できる、ハイブリッド形式での研究会を行います。今年の研究会においては、「ポストコロナワールド、新常態の生活様式を意識しながら、空間デザインと社会デザインがどうなっていくのか」を共通テーマとしながら、空間デザインと社会デザインごとに、各3回の研究会を開催します。
プログラム・ディレクター高宮記
最近始まったドラマに,事故で意識を失った10歳の少女が25年間ぶりに目を覚ますというものがあります。今から25年前は、ちょうど阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件が発生し、Windows95が登場した年です。もし本当にこの年からいきなり今年にジャンプしたら、この25年間は少女で無くてもついて行けないほど大きな変動期だったと思います。そして今年2020年、COVID-19以前と以後で、世界は大きく変化しはじめています。
私たちの多くは,この春から夏にかけて、外出制限と在宅を余儀なくされ、そんな中もちろん前世紀昭和のオイルショック時と同様のデマによる買い占め、品切れ、値上がり等も発生しましたが、その主戦場は、スーパーではなく、インターネット上でした。そしてネットとAIの普及により、海外の著名な思想家たちのCOVID-19に関する言説をリアルタイムでAI翻訳されて家にいながらスマホで受け取ったり、ウェビナーによってオンラインのセミナーに参加したりすることを気軽に出来るようになりました。
その意味で25年前にWindows95によって、インターネット利用が一般化したのと同様に、今回のCOVID-19以降の世界は、リモートワークやオンラインミーティングが一般化し、それに伴う生活様式も大きく変化するでしょう。例えば、リモートワークにより通勤定期支給が無くなれば、休日に都心に出掛けるのを止め、自宅近辺での楽しみを見いだすことが増えることなどだけでも、生活者だけでなく、鉄道事業者の商業施設戦略、沿線の事業者に大きな変化をうむでしょう。このように時間、距離の変化は住宅からオフィスから様々な公共施設、更には人々の生活様式にまで大きな変化をうむきっかけとなるでしょうし、今から25年後は,簡単には想像もつかない変化が起きているでしょう。
しかし、一方で、ネット、デジタル、サイバーの普及、時間距離の消失とは、本当はどういうことなのでしょうか。
ハイデガーは70年前の講演で既にこう述べていました。「時間上、空間上の距離は、既に収縮しつつあります。」しかし、彼が同時に提起したように「どれほど長い間隔をどんなに短い隔たりに縮小したとしても,近さがいっこうに現れないとしたら、近さとは何でしょうか。・・・距離をごっそり除去したはずなのに、全てが同じように近く,かつ遠いとすれば、この同形で画一的なものは何でしょうか。そこでは、全てが遠くも近くも無く、いわば隔たりを失っているとすれば。」(M.ハイデガー「物」講談社学術文庫『技術とは何だろうか』16-17p所収)
今回の研究会では、COVID-19による、あるいはCOVID-19が後押しする空間や社会の変化、そこに求められるデザインを考えていきます。そこではオフィスや住宅などへの直接的具体的なニーズの変化から、それらの背景にある人々の生活意識や行動様式の変容、更にはその根底にあるより長期的で大きな社会や価値観の変動までを視野に入れることで、一過性のマーケットやニーズでなく、中長期的な事業や社会のトレンドを考えていきたいと思います。
空間あるいは空間デザインについて、3つの視点から考えていきます。ひとつめは空間のナカ(中味)、あるいは空間デザインとナカミの関わり方について。2番目は、ソト(外部)、COVID-19以前から大きな流れとなっている、アウトドア空間とその活性化について。最後に、空間デザインそのもの(=ウツワ)について。
社会あるいは社会デザインについて、3つの視点から考えていきます。一つ目は都市、2つ目は地方、3つめは世界あるいは地球。それぞれ様々な課題と可能性を抱えていますし、互いに深く関連しています。このため、補助線として、ⅰサードプレイス、ⅱマルチハビテーション/パラレルライフ、ⅲSDG’sというキーワードから紐解いていきます
11月プログラムはオンライン配信にて行います。
参加希望者は該当プログラム前日までにこちらより(Googleフォーム)ご応募下さい。
ご登録頂いたメールアドレス宛に、最新の情報や参加方法のご案内をお送りさせて頂きます。
寄付講座・文化の居場所事務局
(月、水~金 11:00~18:00)
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03-3985-4725
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